暮らしに役立つ 医療のおはなし 25
肺気腫について(1) やなせ内科呼吸器科クリニック 院長 柳瀬 賢次

肺気腫とはどんな病気なのでしょう?今回からしばらくの間、肺気腫の原因から症状、治療法まで詳しくご紹介します。


■肺気腫になると
  肺気腫になって病気が進行してくると、図-1のようにやせてくる人が多く見られます。これは呼吸にたくさんのエネルギーを使うためです。鎖骨の上がへこんできたり、首から胸につながる筋肉(胸鎖乳突筋)が張ってきたりします。また、普通の呼吸の仕方だと苦しいために、息を吐く時に口をすぼめたりします。こうすると、息がしっかりはけるので、呼吸が少し楽になるのです。これを「口すぼめ呼吸」と言います。
  肺気腫になると、動くときに息が苦しいと感じるようになります。これが主な症状ですが、咳や痰の出る人も多く、長い間病気と闘っているうちにやせ気味になってきます。このような症状がでてくるのはなぜか、肺気腫では肺や気管支のどこがどんなふうに傷んでいるのかを、順次ご紹介していきます。今回は、今後の話をより良く理解するために、正常の肺の仕組みから説明します。

■正常な気管支と肺
 呼吸によって取り入れられた空気は、図-2のような通り道を通って身体に送られます。
まず、喉仏(のどぼとけ)から気管がまっすぐ下におりていって、胸の中ほどで左右の気管支に分かれます。のどを触るとわかるのですが、気管や気管支は筋肉のようは柔らかくはありません。耳のように軟骨が入っているからです。軟骨の形はアルファベットのCの字のような形をしています。
  この軟骨が入っているために、気管や気管支は丸い形が維持できます。軟骨がないと、息を吐く時などに外から圧力が加わり、気管支はペチャンコになってしまって、息が吐き出せなくなってしまうのです。

 


 
軟骨は途中までC字型ですが、気管支が細くなるにつれて形が変わり、石畳の石のような形になります。さらに細くなり、細気管支と呼ばれるところまでいくと、軟骨はなくなってしまいます。
  気管支は枝分かれをくり返しながら細くなっていきます。気管支だけをとりだすと図-3のようになります。
  細い気管支の先端を拡大して見ると、ブドウの房のように丸い袋がたくさんついています(図-4)。これが肺胞(はいほう)です。身体から二酸化炭素を捨て、酸素を取り入れるのに大切な働きをする場所になっています。図-5は気管支に肺胞をつけた様子です。
  吸った空気は気管支を通ってずっと奥まで行き、肺胞の中に入ってきます(図-6)。肺胞は血管によって網の目のように包み込まれています。このような構造があるために、空気中の酸素を血液のなかに取り入れることができるのです。
  肺気腫になると、肺胞の壁が壊れ、肺の中にたくさんの空気がたまった状態になります。その結果、冒頭で紹介したような症状が現れるのです。(つづく)


※次回からは、肺気腫の肺の状態を詳しく紹介します。

 







発行/萩野原メディカル・コミュニティ