循環器なんでもQ&A Vol.16 

やなせ内科呼吸器科クリニック 循環器科 山下 恭典

健康や病気に関する読者の疑問に応えるなんでもQ&A。
今回は山下先生が循環器の病気に関する質問にお答えします。


Q1 「携帯電話が心臓にペースメーカーを入れている人に対して良くない影響を与える」とよく耳にします。ペースメーカーとはどのようなものですか?携帯電話がどのような悪影響を与えるのですか?

A1 心臓のはたらきを助ける大切な医療機器です
 ペースメーカーとは、身体に植え込む心臓用の電気刺激発生器です。本体を左右どちらかの胸の皮下に植え込み、リード(電線)を鎖骨の下を通る静脈を通じて心臓の中まで入れて固定します。植え込まれたペースメーカーは心臓の拍動を感知し、適切な電気刺激を送って心臓を収縮させます。脈拍が異常に遅い病気を持つ人は、脳の血液の流れが不足して失神やけいれんを起こし、最悪の場合には命にかかわるような状態に陥ることがあるため、この機械が必要なのです。まさに「命綱」とも言える大切な存在です。
 ペースメーカーは強い電波や磁気に当たると設定が狂ってしまいます。携帯電話は、もっとも身近な発生源の一つです。ペースメーカーを埋め込んでいる人の傍で携帯電話を使う場合、一般的に「ペースメーカー本体を植え込んでいる側とは反対側で最低22センチ以上離して通話すれば安全」とされています。
 このようなことから、ペースメーカーを植え込んでいる人がいるかもしれない場所である「公共交通機関」や「病院」では携帯電話の電源をオフにするのがマナーだと思います。最近では利便性を優先し病院内でも携帯電話使用を認める風潮がありますが、隣に座っている人がペースメーカーを入れているかもしれず、問題が残るように思います。


Q2 ペースメーカーを入れている人が、日常的に避けるべきものは何ですか?

A2 医療関係、仕事関係、家庭など避けるべきものが身近にあります。
 特に危険なものとしては
■医療機器関係/MRI検査、ガンマ線照射装置、電気メス、除細動器など(後二者は治療上どうしても必要な場合は使用)
■仕事関係/各種溶接機、発電施設、レーダー基地、放送所など
■家庭など/電気風呂、低周波及び高周波治療器、漏電している電気機器、全自動麻雀卓
などがあります。
 絶対ではないが障害源になるものとしては電磁調理器、IH炊飯器、店舗の盗難防止システム、携帯電話、磁気治療器を含む磁石、エンジンの露出した機器(オートバイ、農機具、モーターボートなど)があります。





発行/萩野原メディカル・コミュニティ