暮らしに役立つ 医療のおはなし 2
ワクチン接種で予防可能!インフルエンザと肺炎の話 やなせ内科呼吸器科クリニック 院長 柳瀬 賢次

セキが出る。タンが出る。息苦しい。そんな症状が肺炎の注意信号。「ただの風邪」とあなどらず、早めの受診で健康を守りましょう


■肺炎ってなあに?

 肺炎は、発熱、セキ、タン、呼吸困難、胸の痛みなどを主な症状とする感染症です。細菌、ウイルス、マイコプラズマなどさまざまな病原体が原因となりますが、ほとんどの肺炎は細菌によって引き起こされます。すぐれた抗生物質が開発され、比較的治りやすい病気とされていますが、お年寄りや抵抗力の低下した人にとっては命を奪いかねない病気です。

■インフルエンザが肺炎を引き起こす?

 この季節もっとも気をつけたいのは、インフルエンザの合併症として引き起こされる細菌性の肺炎です。
人間が健康な時、のどの中にある気管支粘膜は、病原体の侵入を防ぐ物質を分泌したり、セキとして体外に捨てたりして健康を守っています(図-1)。しかし、インフルエンザなどのウイルスに感染すると、この仕組みがうまく働かなくなり、細菌がのどの奥に侵入しやすくなります。そして、侵入した細菌が急速に繁殖すると、肺炎を発病するのです。

■肺炎の症状と検査
 肺炎にかかると、発熱、セキに加え黄色、黄緑色や褐色の膿のようなタンが出ます(時に呼吸困難や胸痛もともないます)。このタンは、膿性痰と呼ばれ、肺炎のサインとされています。このようなタンが出たら、早めに検査し、抗生物質による治療を受ける必要があります。
 タンの中には、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌など肺炎を引き起こしている菌がいっぱいおり、顕微鏡で観察すると、図-2のような菌が見つかります。
 肺炎にかかっているかどうかを調べるためには、レントゲンがもっとも有効です。健康なら黒く写る肺に、図-3のように白い部分があったら、そこに膿がたまっている証拠です。その他、血液検査なども行います。
 なお、お年寄りの場合は症状が出にくいため、セキやタンなどが出なくても肺炎にかかっていることがあります。元気がない、食欲がない、息が荒い程度の場合でも、念のため検査を受けることをおすすめしています。
■こんな患者さんは入院を!
 最近では、軽い肺炎の患者さんは通院で直すことができます。しかし、次のような場合には入院治療が必要となります。
(1)酸素不足の程度が強く(呼吸不全)、酸素吸入が必要な場合
(2)自分の力で食事がとれない場合
(3)肺、心臓、腎臓、肝臓などの持病があり、重症な場合
(4)抗生物質の飲み薬が効きにくい菌による肺炎にかかっている場合
 肺炎を軽くすませる最大のポイントは「早めの治療」です。疑わしい症状が出たらすぐに、「たかが風邪」などと思わず診察を受けることが大切。治療の開始が1日遅れただけで重症になることもあり、後遺症が残ることもあります。

■肺炎はワクチンで予防できます
 肺炎の予防は、規則正しい生活、睡眠と栄養が第一です。同時に大切なのは、ワクチンの接種。 前号でご紹介したインフルエンザワクチンに加え、肺炎を引き起こす頻度のもっとも高い「肺炎球菌」のワクチンも効果があります。
日本ではまだあまり普及していませんが、欧米ではよく行われています。お年寄りや、肺、心臓、腎臓、肝臓、糖尿病などの持病がある方、手術で脾臓を摘出されている方など、肺炎が重症化しやすい方にはおすすめしたい予防法です(肺炎球菌以外の菌による肺炎の予防効果はありません)。1度接種すれば効果は5年以上続くと言われています。まずは診察室でご相談ください。





発行/萩野原メディカル・コミュニティ