診療報酬改定と今後の医療改革 2002年4月現在

わたひき消化器内科クリニック  

1. 今回の診療報酬改定について
■再診料が受診回数によって変動するようになりました。
 3月末までは、月に何回受診しても再診料は変わらなかったのですが、4月1日からは月の1回目の受診時は81点、2回目、3回目は74点、4回目以降は37点となりました。また、再診料の外来管理加算(検査等を行わなかった通常の診療で加算される点数、3月までは常時52点)も月の3回目までは52点で変わらないのですが、4回目からは26点になりました。
 これらの点数に10を掛けたものが医療費で、保険によりその2割または3割を患者さんが窓口で支払います。患者さんの負担額でみると、今回の改定は、月に1回、半年に1回などの割合で診察を受けられている患者さんにとっては負担額が少し引き上げられる結果となりますが、4回以上受診されている患者さんにとっては、大幅な引き下げになります。

■検査実施・薬の処方箋の点数が引き下げられました
 検査判断料は、検体検査を除くと2〜7点の引き上げになりました。しかし、検査実施料の多くが引き下げられたため総合的には負担が軽くなると言えます。
 また、薬の処方箋も内服薬6種類以下の場合81点、内服薬7種類以上の場合53点だったものが、それぞれ、69点と41点、後発品(注|1)を含む処方の場合は71点と43点に引き下げられました。
 一般的な部分について言えば、今回の改定は、患者さんの負担がやや軽減する方向での変化だと考えて良いと思います。
2.老人医療について

■老人窓口負担額が4月1日から引き上げられました。
 3月末までの診療では、老人医療対象者(70歳以上の方)の患者さんは、1回の診療で800円(1ヶ月のうち5回目以降は無料)の負担だけで、薬局での負担はありませんでしたが、4月1日からは、支払い金額が850円に引き上げられました。

■ 月からは、対象年齢の引き上げ、負担割合も増加の可能性があります。
 まだ決定ではありませんが、今年10月からは、老人医療対象の年齢が75歳以上(現在の対象者は現行のまま)に引き上げられる可能性があります。さらに、老人医療の定額制(両クリニックのように月の4回目の受診までは1日につき850円、5回目以降は負担無料で受診できる制度)が廃止され、いったん窓口で1割ないし2割の負担分を支払い、手続きで限度額を超えた分を払い戻してもらう「償還制」という制度に変わる予定ですし、老人医療対象者で一定以上の所得がある方については、負担割合が1割から2割に変わる予定です。残念なことですが、老人医療については、少しずつ患者さんの負担が増える方向へ向かっています。

3. 今後の医療改革と患者さんの負担
 2003年4月には健保本人の負担割合を2割から3割に引き上げることを政府が明言しています。また、同時期に健保の保険料の引き上げも考えられており、サラリーマンの患者さんの負担は増える一方です。今回の診療報酬改定でほんの少し良くなっても、老人医療や健保でこのような改定が行われれば、患者さんの負担は今後増えるばかりです。
 医療を誰でもが受けやすいようにし、早め早めに病院や医院にかかれる環境を整えることが、健康な人を増やし、医療費を増やさないことにつながります。まだ決定されていない事項については、両クリニックが参加している全国保険医団体連合会等でも、撤回や大幅修正に向けて運動しています。誰でも安心して医療を受けられる環境を作るために、「大地」では今後も医療改革の動きについて患者さんに詳しく伝えていくつもりです。ご協力下さい。


注-1 後発品(ジェネリック医薬品)について
 今まであった薬(先発品)と同じ成分で作られた薬で、特許が切れた後に販売されるものを指します。開発費が少なくすみ薬価が安いのですが、先発品とまったく同じ効き目を持っています。処方箋料は2点上がりますが、薬局で支払う金額は少なくなり、実質的にはお金がかからなくなります。クリニックでも、患者さんと相談しながら、患者さんの負担が少ない後発品を使用していく予定でいます。


後発品の一例

●抗潰瘍剤 : ザンタック(薬価71.4円)→ラデン(薬価57.1円)
●降圧剤 : セタプリル(薬価50.7円)→セポチール(薬価24.1円)
※後発品に関するパンフレットを待合室に置いていますので、一読してみてください