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暮らしに役立つ 医療のおはなし 73

糖尿病と膵疾患 (その1)

わたひき消化器内科クリニック 院長 綿引 元

膵臓はインスリンとグルカゴンに代表される血糖調節ホルモンを産生・分泌する重要な臓器であり、そのため膵疾患と糖尿病には密接な関係があります。

■膵臓の構造

 膵臓はみぞおちの奥、背中側にある重さ100gほどの勾玉状の臓器です。膵頭部は十二指腸に囲まれ、総胆管が膵頭部を貫きます。膵臓は、お腹の中のさまざまな臓器を養う血管やリンパ管、神経が集中するところにあります。(図1)

膵臓には、食物を消化する消化酵素(膵酵素)を十二指腸に分泌する外分泌腺と、血糖を調整するホルモンを分泌する内分泌腺があります。  膵酵素には、炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白質を分解するトリプシン、脂質を分解するリパーゼなどがあります。  膵臓の内分泌腺は、外分泌腺の中に小さな球状の塊として孤立し散在し、ランゲルハンス島(膵島)とよばれています。ヒトの膵臓には100〜200万個の膵島が存在しています。膵島には、血糖を下げる働きをするインスリンを分泌するβ細胞と、血糖を上げる働きをするグルカゴンを分泌するα細胞があります。血糖が高くなると、インスリンが血中に分泌され、肝臓や筋肉、脂肪組織に働いて血糖を下げます。グルカゴンはインスリンと逆の作用を有するホルモンで、主に肝臓に作用して血糖を上げる働きがあります。(図2)


■膵臓の病気(図3)

膵外分泌腺、膵内分泌腺それぞれに炎症と腫瘍があります。膵外分泌腺の炎症は膵炎と呼ばれ、急性膵炎と慢性膵炎があります。慢性膵炎の中でも自己免疫性膵炎は、病態や治療の違いから別枠で捉えています。 膵外分泌腺の腫瘍には、充実性腫瘍と嚢胞性腫瘍があり、充実性腫瘍の代表が膵癌です。 膵内分泌腺の炎症に膵島炎があります。膵島炎により、膵β細胞が破壊され、インスリンが不足し1型糖尿病が発症します。一方、日本人に多い2型糖尿病は、肥満などによってインスリン分泌が過剰になり、膵β細胞が疲弊・破綻し発症します。また、膵癌や慢性膵炎に合併する糖尿病は膵性糖尿病と呼ばれます。 膵内分泌腺の腫瘍に神経内分泌腫瘍があり、代表的なものにインスリンを過剰分泌して低血糖を頻発するインスリノーマがあります。 (日本消化器病学会ガイドラインより)



発行/萩野原メディカル・コミュニティ