暮らしに役立つ 医療のおはなし 1

インフルエンザワクチンのお話 やなせ内科呼吸器科クリニック 院長 柳瀬 賢次

毎年猛威をふるうインフルエンザ。肺や呼吸器に慢性疾患を持つ方や高齢者には、特に恐ろしい病気です。しかし、ワクチン接種できちんと予防することができます。インフルエンザワクチンの効果と必要性をよく知り、今年のうちにインフルエンザ対策を行いましょう。 

●インフルエンザってどんな病気?
■合併症を併発すると、生命を落 とすこともあります。
 インフルエンザは、例年1月から2月に流行のピークを迎えるウイルス性の病気です。高熱と鼻水、のどの痛みなどの症状が特徴で、突然発病し、人から人へと瞬く間に広がります。1週間程度で症状がおさまるのが普通ですが、肺炎などの合併症を併発して重症化することがあります。特に、お年寄りの合併症は死に至るケースもあり、「老人の最後のともしびを消す病気」と言われて恐れられています(図-1)。
 
●なぜ毎年大流行するの?
■ワクチンの接種率が低下しているのが一因です。
 ここ数年の間に、インフルエンザの診療は、診断・治療の両方の分野で飛躍的な進歩を遂げています。しかし、インフルエンザによる健康被害はなかなか減りません。その原因は、インフルエンザワクチン接種率が低いことにあります。日本では、1980年代に巻き起こったインフルエンザワクチンの効果をめぐる議論を受け、急激に低下してしまった接種率が、ワクチンの効果が世界的に認められた現在になっても、低い率に留まっています(図-2)。
適切な予防が行われていないため、毎年のように大流行し、多くの方が命を落としているのです。

●ワクチンを接種すればインフルエンザにかからないの?
■かかることはありますが、軽い症状ですみます。
 インフルエンザワクチンの効果については、多くの研究結果が報告されています。例えばアメリカで、7つの老人ホームに入所する1018人のお年寄りを対象に調査したところ、「発生率」「入院率」「肺炎の発生率」「死亡率」の4項目のすべてにおいてワクチン接種を受けたお年寄りの方が低いことがわかったという報告があります。つまりワクチンを接種していれば「インフルエンザにかかりにくい」「かかっても重症になりにくい」ということです。どんなにすぐれた治療薬ができても、ワクチン接種による予防にまさるインフルエンザ対策はないのだと言えます。

●どんな人が接種を受けるべきなの?
■重症になりやすい方と、その方に身近に接している方が対象です。
 インフルエンザワクチン接種の対象は、第一に、インフルエンザにかかった場合重症になりやすい「ハイリスク群」の人。50歳以上の人、肺や心血管系の慢性疾患を持つ人、糖尿病・腎臓病・血液疾患を持つ人などが含まれます。次いで、ハイリスク群の患者さんと日常的に接する人が対象とされています。その他、お年寄りや、お年寄りを介護している人も、接種を受けるのが望ましいと思います。

●いつ、どのように接種を受ければ良いの?
■11月から12月にかけてがベスト。13歳以上は1回接種です。
 インフルエンザワクチンの接種回数は2回とされていましたが、1回接種でも2回接種と同じ程度の効果を得られることがわかり、13歳以上の方については1回の接種でよいことになっています。ワクチンを接種すると、2週間ほどでインフルエンザに対する抵抗力がつき、効果は3〜4ヶ月持続します。対象となる方は、11月から12月にかけてワクチンを接種し、もっとも流行する1月から2月に備えましょう。






発行/萩野原メディカル・コミュニティ