暮らしに役立つ 医療のおはなし 18
気管支喘息と吸入薬 やなせ内科呼吸器科クリニック 院長 柳瀬 賢次
 
■はじめに
 気管支喘息の患者さんの気管支では、慢性的に炎症が起こっています。その結果、気管支の粘膜が腫れたり、痰がつまったり、気管支が細く縮まったりして空気が通りにくくなり、ゼーゼーと音がする苦しい呼吸となります(図-1)。この気管支の炎症を抑えることが喘息の治療の中心となります。

■吸入薬の種類

 現代の気管支喘息治療の中心となるのが吸入薬です。吸入薬には、病変のある気管支にだけ薬が作用し、効果が大きい上に全身への副作用が出にくいというメリットがあります。
 吸入薬には大きく2つの種類があります。「長期管理薬」と「発作治療薬」です。
 長期管理薬は、症状のあるなしに関係なく、継続して使用する必要のある吸入薬です。気管支の炎症や収縮を抑える役割をもつ薬ですが、即効性はないので発作が起きたときだけ使用してもすぐには効きません。
気管支喘息は風邪のような一過性の病気とは異なり、糖尿病や高血圧と同じような慢性の性格を持っているため、こうした薬を日常的に使って安定した状態を維持することが大切です。
 一方、発作治療薬はその名の通り発作が起きたとき、臨時に使用する薬です。
 
長期管理薬のいろいろ(図-2)
(1)吸入ステロイド(フルタイド、パルミコート、キュバール、アルデシンなど)
 ステロイドは、のんだり、注射をした場合は薬が全身にまわるため、長期間使用するとその副作用で抵抗力が弱くなったり、糖尿病、胃潰瘍、骨粗しょう症などになりやすくなります。しかし、吸入ステロイドの場合は、薬が全身にまわらず気管支だけに作用するので、よほど大量に使用しない限り、副作用の心配はいりません。
(2)長時間作用性ベータ2刺激薬(セレベント)

発作治療薬のいろいろ(図-3)

 発作治療薬(メプチン、サルタノールなど)は、必要以上に使用すると心臓への負担が出るため、1日8吸入以下に制限して使用します。とはいえ、副作用を警戒し過ぎたり、「とっておきの薬」と考えて重症の発作になるまで使用せず我慢してしまうのは正しくありません。重症の発作になってからでは薬の効果が出ないので、使用のタイミングをしっかり把握することが大切です。「のどがつまる感じがする」「息をするとヒューヒューいう」「息切れがする」「呼吸が速くなったり荒くなったりする」「クシャミや鼻水が出る」など、発作の前兆を感じたら早めに使いましょう。このやり方で1日の使用回数を8吸入以下に抑えられない場合は、長期管理薬の効果が不足していることになるので、薬の種類を変えたり量を増やす必要があります。すぐに相談してください。
 

■上手な吸入のポイント 
 
のみ薬はゴクンとのみ込むだけで薬が腸で吸収されて効果を発揮します。しかし、吸入薬は正しく吸入しないと薬が気管支まで十分に届かず、効果が得られないことがあります。患者さんの中には、吸入したとき、薬がのどを強く刺激した方がよく効くと思っている方がいらっしゃいますが、実はそれは大きな誤解です。病気になっているのは「のど」ではなく「気管支」なのですから、のどに薬を吹きつけても病気は良くなりません。
●ドライパウダータイプの場合
  粉になった薬を吸入するもので、フルタイド、セレペント、パルミコートなどがあります。それぞれの吸入器具の使用上の注意をしっかり読んで、それに従って吸入してください。
●エアゾールタイプの場合
  霧状になった薬を吸入するもので、キュバール、アルデシン、メプチン、サルタノールなどがあります。そのまま口の前でシュッと噴霧しても良いのですが、図-4のような吸入補助具を使用することによってより多くの薬が気管支に届き、効果も高まります。

 

 





発行/萩野原メディカル・コミュニティ