「糖尿病教室」 6

糖尿病の運動療法(その1) わたひき消化器内科クリニック 綿引 元

■毎日の健康を支えるためには運動、休養、栄養の3本柱が重要

 健康に生きるためには動くこと、つまり運動をすることが必要です。また、疲れたらゆっくり休むこと、すなわち休養も大切になります。さらに、私たちの身体を維持するためには栄養も欠くことはできません。現代の便利な生活の中では、身体を動かすことが少なくなり、運動不足が目立って来ています。また、いつでもどこでも食べたいものが手にはいる飽食の時代の中で、過食や偏食で、栄養のバランスも崩れています。その上、現代の社会生活は合理化とリストラなどによる「過労死」に象徴されるような、「人間の生活」を大切にしない風潮が広がっており、その結果としてストレスが蓄積されて、肉体的にも精神的にも疲れて休養もまともにできない状態にあります。このように、運動不足をはじめとして3本柱のバランスが崩れ、私たちの健康が大きく破壊されつつあります。

■運動不足が続くと体力が衰えます
 私たちの身体は、適当に動かすことで良好に身体機能を保っています。運動するためには筋肉や神経ばかりでなく、肺や心臓など、さまざまな器官の働きが必要になります。運動不足の状態が続くと、これらの器官の機能が衰え、体力が衰えていきます。また、筋肉を使わないと萎縮し、萎えて力が出せなくなります。骨格を支えているのは筋肉ですから、筋肉が萎えると身体を支えきれなくなり、肩こりや腰痛がおきやすくなります。さらに運動不足が続けば骨までもろくなり、折れやすくなります。いつまでも自活できる体力を維持することはもちろん、生活の質を維持するためにも運動が大切になります。

■運動不足は糖尿病の原因の一つです
 生活習慣病の代表である糖尿病は、食べすぎや運動不足が引き金になって発症します。また、この誤った生活習慣は、糖尿病を悪化させる原因にもなります。食べすぎ、運動不足の生活は肥満を生み、糖尿病を発症しやすくします。さらに、ストレスの蓄積は、この傾向に拍車をかけます。

■糖尿病治療の基本の一つ「運動療法」
 運動療法は、食事療法とともに、糖尿病治療の車の両輪に例えられています。特に、2型の糖尿病の患者さんにとって、より大きな効果をもたらす治療法です。しかし、糖尿病のコントロール状態が悪い時、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症などの合併症が進んでいる時には、運動することでさらに病気を悪くしてしまうこともありますので、身体の状態をみながら実施する必要があります。また、運動のしかたも大切になります。医師の指導の下、ご自分の状態にふさわしい運動を無理なく続けることがもっとも効果的です。