「糖尿病教室」 8


糖尿病の運動療法(その3)
 わたひき消化器内科クリニック 綿引 元

■運動を始める前に必要なこと

 運動療法を積極的に行ってよい人と行わないほうがよい人がいますので、運動をはじめる前に、現在の自分の状態をよく知っておくことが大切です。

(1)メディカルチェック
 (主治医に病気の状態を
調べてもらいましょう)
 血糖コントロールの悪い人は、まず食事療法と薬物療法によって血糖コントロールを安定させてから、運動療法を開始することが大切です。また、糖尿病の合併症をもつ人は、積極的な運動療法は見合わせましょう。

網膜症があるとき:単純性網膜症は問題ありませんが、前増殖性になると運動による血圧上昇で新しい眼底出血を起こす危険がありますので、激しい運動は避けましょう。増殖性では積極的な運動療法は見合わせましょう。

腎症があるとき:早期腎症は運動してもよいですが、蛋白尿がときどき出る状態では激しい運動を避け、蛋白尿が常に出ている顕性腎症では積極的な運動療法は見合わせましょう。

神経障害があるとき:手足のしびれや痛みが運動で強くならなければよいですが、症状が強くなる場合には運動療法は見合わせましょう。また、起立性低血圧や心血管系の不安定など自律神経障害が強い場合も、積極的な運動療法は見合わせるべきです。
 糖尿病の患者さんは高血圧症、脳梗塞など脳血管障害、心筋梗塞など心臓の病気を持つ人が多いので、運動時の血圧や心臓の状態をチェックすることも大切です。また、骨や関節など整形外科的なチェックも大切になります。

(2)身体的チェック
身長、体重、体脂肪率を測定し、自分の体型を把握しましょう。運動能力に応じた安全で効果的な運動をするためには、体力の測定も大切です

(3)生活習慣のチェック

 運動療法を日常生活の中に定着させるためにも、自分自身の日常生活の過ごし方や休日の過ごし方など生活習慣を見直してみましょう。
以上のチェックを行いながら、自分自身にあった安全で効果的な運動をして行きましょう。