暮らしに役立つ 医療のおはなし 27
大腸癌 〜その予防と治療〜(その2) わたひき消化器内科クリニック 綿引 元

■早期発見と予防のために
 40歳以上で、肉類や高脂肪の食事を多くとる人は、大腸癌にかかりやすいと考えられています。この条件にあてはまる場合は、大腸に関連した自覚症状がなくても、定期的(一年に一度)に便潜血反応検査を行い、陽性であれば精密検査を行うことが、大腸癌の早期発見の早道です。
 潰瘍性大腸炎などの大腸の病気にかかったことのある人、家族に大腸癌になった人がいる人は特に注意が必要で、内視鏡検査や注腸造影検査などの精密検査を受けて、よく調べることが大切です。

 
大腸癌の予防のためには、次のことを心がけて下さい。
1).肉食を控えめにする
2).野菜をたくさん食べる
3).便通を整える
4).適度に運動をして腸の動きを活発にする


■大腸ポリープと早期大腸癌
 大腸に5mm以上のポリープがある場合は、早めに切除しておくと大腸癌のリスクが少なくなることがわかっています。

 大腸ポリープは腺腫などの腫瘍性のポリープと炎症や過形成などの非腫瘍性のポリープに大きく分けられます。なかでも、一部の大腸腺腫は前癌病変として大腸癌との関連が明らかになっています。
 最近になって、隆起の目立たない平坦型や陥凹型早期癌が発見され、1cm以下にもかかわらず、癌化率が非常に高い腺腫由来でない大腸癌が存在しています。しかしながら、従来から大腸癌の発生は腺腫を母地に発生するとされており、腺腫内癌とよばれ腺腫の一部に癌が見出されることが少なくありません。大きな腺腫ほど癌化率が高く、内視鏡的ポリペクトミー(肛門から挿入した内視鏡を用いてポリープを切除する方法。次回に詳しく説明します)を行った腺腫の中で1cm以下の病変でも癌化率が3〜5%もあることが明らかになってきました。


■早期癌と進行癌
 大腸の壁は、腸の内腔(内側)から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(あるいは外膜)の4つの層から成り立っています。さらに、大腸壁の外にはリンパ節があり、リンパ管が走っています。癌は、最初は粘膜にできますが、やがて大腸の壁を外側に向かって深く広がっていきます。このうち、癌が粘膜、または粘膜下層にとどまっているものを「早期癌」といいます。
 一方、「進行癌」は、粘膜下層を超えてさらに深く広がり、固有筋層、漿膜までおよび、さらに大腸の壁を突き破ってしまうことがあります。
 大腸癌が最も転移しやすいのがリンパ節です。粘膜にはリンパ管の枝がなく、粘膜内にとどまった癌は転移の心配はありませんが、癌が粘膜下層以下に及ぶとリンパ節に転移する可能性があります。
 早期癌であれば転移の可能性は低く、「5年生存率」は、約95%にも上ります。また、最近では進行癌でも治る確率が高くなり、直腸癌では癌が大腸の壁を超えていなければ、「5年生存率」は85%近くになります。(つづく)



発行/萩野原メディカル・コミュニティ