やなせ内科呼吸器科クリニック 循環器科 山下 恭典
健康や病気に関する読者の疑問に応えるなんでもQ&A。
今回は山下先生が循環器の病気に関する質問にお答えします。
Q 心臓の弁に逆流がある
六十四歳になる父が数年ぶりに人間ドックで心エコー検査を受けたところ、「心臓の弁に逆流がある」と指摘されました。これはどのような病気で、どんな症状が出るのでしょうか。手術などが必要になることがありますか。日常生活ではどのようなことに気をつければいいかも教えてください
A 心臓の弁の逆流とは
心エコー検査は超音波を用いて心臓の内部の様子を断面図で表示し、心臓の病気の診断を行う検査です。心臓の中は4つの部屋に分かれています。その4つの部屋の間を勢い良く複雑に移動する血液の逆流を防止する4つの弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)があります。心エコー検査は、それらの弁の様子を見るのにもっとも適した検査法です。心エコー検査が普及したおかげで、以前なら見つからなかった僅かな逆流を見つけることができます。
●必ずしも「逆流=病気」ではない
弁の逆流がある例の全てが病的とは言えません。弁の逆流には
(1).先天的な弁の異常が原因の弁逆流
(2).リウマチ熱や心内膜炎など後天的な病気で弁が傷んで起きる弁逆流
(3).加齢により弁が劣化して起こる弁逆流
(4).その他特殊な病気による弁逆流
があります。(4)は別として、病気として診断・治療が必要なのは(1)と(2)のケースです。(3)の場合は逆流がひどくなければ治療の対象にならないことも比較的多いのです。
●自覚症状が出ている場合は手術も
逆流が軽い場合は心臓に負担が少なく自覚症状はありませんが、逆流が長年にわたると息切れや動悸、不整脈などの症状が出ます。そのような場合は、手術が必要になることもあります。
●日常生活の摂生では良くならない
日常の摂生で弁の状態が良くなることはありませんが、血圧が高いと弁の傷みがひどくなるので、高血圧はきちんと治療しましょう。病気としての弁逆流がある場合は、医師の管理の下で原因となっている病気を治療していきます。
●まずは循環器科に相談を
ご相談のケースでは、弁逆流の原因と程度をきちんと診断する必要があります。詳しいことがわかれば、病気として治療すべきか、定期的な心エコー検査による経過観察で良いのか、または放置しておいても心配ないものなのかを判断できます。あまり不安がらず、お気軽にご相談ください。
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