暮らしに役立つ 医療のおはなし 32 |
大腸癌 〜その予防と治療〜(総集編) わたひき消化器内科クリニック 綿引 元
生活習慣の改善による予防(一次予防)〈大腸癌〜その予防と治療(その2)を参照して下さい〉と、スクリーニング(便潜血反応など大腸癌の拾い出し診断)の普及による予防(二次予防)が大切になります。大腸癌は早期に発見すれば、ほぼ100%治すことができる癌です。それにもかかわらず死亡数が増えているということは、発見が遅れているということであり、皆さん自身が自らの健康を守るためにも、「検診」を積極的に受けることが大切です。 大腸癌の治療については、全国どこの病院でも同じ質の高さで受けられるように「大腸癌治療ガイドライン」(大腸癌研究会)が作られています。さらに、大腸癌の患者さん、その家族の方々、および、この病気に関心のある方々に広く利用していただくための「大腸癌治療ガイドラインの解説」が出版され、大腸癌について理解しやすいように解説されています。その中から、大腸癌の広がり方を紹介しますので、早期発見の重要性を改めて確認して下さい。 ■大腸癌の治療と経過について 大腸癌は、大腸の粘膜に発生し、その後「浸潤(しんじゅん)」「リンパ行性転移」「血行性転移」「播種(はしゅ)(播種性転移)」により広がっていきます。(a・b・c) ●浸潤(しんじゅん) 大腸癌は腸の一番内側の粘膜にできて、腸の壁を破壊しながら、深くそして腸の外側に向かってだんだん大きくなり、最後に腸の壁を突き破り、周囲の臓器にまで広がっていきます。この広がり方を浸潤といいますが、癌が大腸壁へ入り込んだ深さ(深達度)により、早期癌と進行癌に区分されます。〈大腸癌〜その予防と治療(その2)を参照して下さい〉 ●リンパ行性転移 リンパ管は血管のように体中に張り巡らされていて、そこに癌細胞が侵入していきます。大腸の壁から出るリンパ管は栄養動脈に沿って走り、途中いくつものリンパ節を伴っています。 ●血行性転移 癌細胞は腸の壁にある細い静脈に侵入し、次いで、他の臓器に流れていきます。大腸の血液はまず肝臓に集まることから、大腸癌では肝転移の割合が最も高くなります。さらに、肺に転移し、もっと進むと骨や脳に転移します。 ●播種(はしゅ)(播種性転移) 増大した癌は腸の壁を突き破り、種が播かれるように腹腔内に癌細胞がばらまかれ、最後に、お腹の中全体に広がり癌性腹膜炎の状態になります。 ●ステージ分類(進行度分類) 癌の進み具合の表し方をステージ分類(病期)といいます。ステージ分類は、癌が大腸壁に入り込んだ深さ(深達度)、どこのリンパ節まで転移が及んでいるか、肝臓や肺など大腸以外の臓器や腹膜にまで転移しているか(遠隔転移)の組み合わせで決められており、「ステージ0」が最も早期で、「ステージ?」は遠隔転移が最も進行した状態です。〈大腸癌〜その予防と治療(その3)を参照して下さい〉 大腸癌の治療方針を立てる上で、このステージ分類を正しく判定することが重要になります。治療の原則は、あくまでも癌を残すことなく、きれいに取り除くことです。 大腸癌と診断された場合、ステージ分類に従って、内視鏡による切除(内視鏡治療)をはじめとして、外科的切除(手術治療)などの標準的な治療が選ばれます。癌が粘膜内にとどまっている「ステージ0」、もしくは、癌が大腸壁内にとどまっている「ステージ?」までに、いかに早期に発見するかが重要になります。 |
発行/萩野原メディカル・コミュニティ |