暮らしに役立つ医療のおはなし 3

胃カメラを上手に受けるために〜胃ガンと内視鏡〜  わたひき消化器内科クリニック 綿 引 元

ガンによる死亡の30%をしめる胃ガン。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は、胃ガンの早期発見に威力を発揮する技術です。専門医の立場から、内視鏡検査を楽に受けるコツを伝授します。

■胃カメラでどんなことがわかるの?
 食道や胃、十二指腸など口に近い部分の消化管を診断するための方法としては、エックス線検査と内視鏡検査(胃カメラ)があります。消化管の中を直接のぞくことのできる内視鏡は、エックス線検査ではわからない小さな病変や潰瘍などを詳しく観察し、ごく早期のガンなども見つけることができます。内視鏡検査中に「生検」と言って、胃や十二指腸の粘膜を2ミリほどかじり取って組織検査をすることもでき、より正確な診断に役立てることができます。
 また、内視鏡を使えば、お腹の中のちょっとした治療を、お腹を切らずに行うことができます。消化管の中での出血の止血や、早期食道ガン、胃ガンの切除も可能です。 「胃カメラを飲むのはものすごく辛い」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。しかし実際には、そんなに苦しいものではありません。内視鏡を飲む時には、「のど」の麻酔をし、「胃」の動きを止める注射を打ちます。その後、内視鏡を飲みます。近頃の内視鏡は大変コンパクトになっており、直径1センチほど。検査時間も、よほど精密な検査を行わない限り、10分程度ですみます。
■内視鏡検査のコツの「コツ」
(1)何はともあれリラックス!
 内視鏡検査室から「ゲーゲー」という声がするのを聞いたことがありますか?あれは、緊張のため身体に力が入って起きるものです。まず、検査前に医師とお喋りするなどして緊張をほぐしましょう。
(2)つかえを感じたら唾をゴクン!
 内視鏡がのどでつかえるように感じたら、身体をかたくせず、唾を飲み込むようにしてみましょう。のけぞったり息をつめたりすると飲みにくくなります。
(3)腹式呼吸で「ため息」
 検査の時間は約5分〜10分です。全身の力(特に肩の力)を抜き、口でため息をつくように腹式呼吸をしていると楽に検査できます。
(4)お腹が張ったら息を吐く
 検査中にお腹が張って苦しくなったら、必ず息を吐き出してみてください。唾は飲み込まず、だらだら流してください。
■麻酔による事故が多発しています!
 最近、患者さんに麻酔をかけ、寝ているうちに検査をすませる施設があります。「麻酔なら楽でいい」と思うかもしれませんが、実は要注意。内視鏡検査のための麻酔による死亡事故が多発しており、その数は、最近5年間に全国で129例にものぼっています。楽に検査できるからといって、安易に麻酔をかけてはいけないのです。医師自らが検査技術を向上するために努力すれば、無駄な麻酔をかけずに楽な内視鏡検査を受けることは必ずできます。医師と患者さんがともに病に立ち向かう医療を追求するためにも、安易な麻酔は避けるべきだと考え、後輩にもそのように指導しています。

■わたひき消化器内科クリニック の内視鏡検査の特徴

 当クリニックでは、患者さん用のモニターを設置し、検査しながら医師と一緒に自分の胃の中を見ることができるようになっています。内視鏡検査の時に撮影した写真は、直ちにパソコンに転送できるようになっており(画像ファイリング装置)、検査終了後すぐ、その日のうちに写真を見ながら説明が受けられます。日本消化器内視鏡学会の認定専門医ならびに指導者の一人として、また内視鏡歴35年、5万件に及ぶ経験に基づいた内視鏡検査を行っていますので、麻酔なしでも患者さんが安心して検査を受けられるよう心がけています。また、万一の場合に備え、呼吸状態や心臓の状態を観察するモニタリング装置を設置していますので、ご高齢の方も安心してご相談ください。

 





発行/萩野原メディカル・コミュニティ