暮らしに役立つ 医療のおはなし 46 |
高血圧ガイドラインに基づいた考え方 今回は高血圧の話です。何をいまさらと言われそうなテーマです。ありふれた病気であるだけに軽視されがちですが、高血圧は全身にかかわる病気なだけに、その初診時には医師としての総合的な判断が必要となります。詳細な診断に基づいた的確な治療が必須なのです。 最近、2009年度版の日本人向けの高血圧ガイドラインが発表されました。ガイドラインとは、その病気に対する、現時点の医学的に妥当で標準的な考え方や診断法、治療法を示したものです。もちろん病気を持つ患者さんは十人十色ですから、すべての人に当てはまるガイドラインというものはありません。個々の症例ごとに医師が判断をしていく際に、大まかな道標となるのがガイドライン本来の役目です。以下にそれぞれの項目ごとに解説を加えながらガイドラインの中身を説明していきたいと思います。 ■高血圧かどうかの判定基準は? 高血圧の診断基準としては、従来「少なくとも2回以上の異なる日の、診察室での安静時血圧が、収縮期血圧(最高血圧)で140mmHg以上、あるいは拡張期血圧(最低血圧)で90mmHg以上のいずれかあるいは両方の場合に高血圧と診断する」というのが一般的でした。現在のガイドラインではもっと細かな分類がされています。表-1をご覧ください。至適血圧、正常血圧の場合は特別な持病のない方は治療の対象となりません。正常高値血圧とは高血圧予備軍と言っても良いかもしれません。黄色信号というところでしょうか。将来的なことを考えると、これに該当する人は生活習慣の修正を受ける対象となります。(生活習慣の具体的な修正内容につきましては表-2を参照してください。なおその中に書かれているエタノール換算で20〜30ミリリットル以下とは、日本酒換算で1合前後のことです)高血圧はその数値によってIからIII度に分けられています。あなたの血圧はどこに該当するでしょうか。至適ですか? 正常ですか? それとも・・・・・。
高血圧は将来的に脳心血管障害(脳出血や脳梗塞、心筋梗塞や狭心症など)を引き起こしてきます。そのため、治療の対象となるわけです。ただしその危険度はもちろん患者さんごとに異なりますし、正確な予測は正直言って困難です。しかしガイドラインでは、血圧以外のリスク因子と高血圧の程度の組み合わせから、その患者さんの脳心血管障害発生危険度を低リスクから高リスクまでに、ある程度分類するように提案しています。それが表-3です。血圧以外のリスクの項目はいろいろと多岐にわたりますので表-4と表-5をご覧ください。 たとえば、67歳のAさんが、肥満はあるが他には特に持病のない人で、その血圧が155/85だったとします。表-4から危険因子が2個(年齢と肥満)当てはまります。高血圧の程度はI度高血圧です。リスク第2層の?度高血圧ですから中等リスクです。一方Bさんは50歳で糖尿病治療中であり血圧が142/78だったとすると、リスク第三層のI度高血圧ですから高リスクとなります。血圧だけを見るとBさんの方がよさそうに思えますが、将来的なことを考えるとBさんの方が心配ということになります。さてあなたの脳心血管障害のリスクは低かったでしょうか? それとも・・・・。 もしリスクが高かった場合は、医療機関で診察を受けて治療計画を立てることになります。治療計画の詳細については次回お話します。 |
発行/萩野原メディカル・コミュニティ |