シリーズ「糖尿病教室」 No.19 |
糖尿病の薬物療法(その6) わたひき消化器内科クリニック 綿引 元 新しい糖尿病薬 インクレチン薬をめぐって(1) 昨年12月以来、新発売が相次いでいるインクレチン関連薬。血糖コントロールがうまくいかない患者さんへの投与で期待が集まっています。しかし、SU剤(スルホニル尿素薬)との併用については低血糖の発現に注意が喚起されています。インクレチン関連薬についての基礎知識を説明しましょう。
インクレチンは、食事中の炭水化物の量に応じて小腸から分泌されるホルモンの総称です。血糖値が高いときだけ膵島に働いてインスリンを出し、血糖を下げる作用があります。 ■インクレチンは高血糖に対応し、インスリンが分泌される 小腸上部のK細胞からGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)が分泌され、小腸下部のL細胞からはGLP-1(グルカゴン様ペプチド1)が食事量に応じて分泌され、膵島(膵β細胞)に作用してインスリン分泌を促します。 なお、インクレチンの多くは、膵島に届く前に血中などに存在するDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ4)という酵素で速やかに分解され、働きを失います。分解されずに膵島にとどいたインクレチンが血糖を下げる方向に働きます。さらに、インクレチンは血糖を上げるグルカゴンの分泌を抑える作用もあります。
このDPP-4の酵素活性を阻害し、インクレチンの働きを持続させる〈DPP-4阻害薬〉、GLP-1の血中半減期を延ばした〈GLP-1受容体作動薬〉が糖尿病薬として開発されました。我が国の糖尿病患者は、炭水化物が多い食事をすることで、食後の血糖が高くなりやすい傾向があります。このようなときは、高血糖に応じてインスリンの追加分泌を促進する、インクレチンの効果がより高く表れます。 |
発行/萩野原メディカル・コミュニティ |