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不整脈とカテーテルアブレーション やなせ内科呼吸器科クリニック 循環器医師 山下 恭典 「カテーテルアブレーションは、不整脈を治療する方法のひとつです。一般に不整脈の治療というと、内服薬や注射液で行われることが多いのですが、これらの方法は不整脈を出にくくするもので、根治させるものではありません。一方、カテーテルアブレーションは、成功率100%ではないものの、うまくいけば不整脈の原因そのものをなくしてしまうことのできるものです。今回は、この、比較的新しい治療法について解説してみます。 ■不整脈はどうして起こるのか 健康な心臓は、規則正しく心臓全体が協調して収縮するように電気刺激を心臓全体に伝える特殊な「刺激伝導系」と呼ばれる構造を持っています(図ー1)。ところが、心臓のどこかに余分な電気刺激を発生させるような場所があったり、正規の電気刺激が特定の場所を旋回してしまうような異常な電気刺激の通り道があったりすると不整脈が起こってしまいます。
カテーテルアブレーションは、不整脈を治療する方法のひとつで、カテーテルを用いて不整脈の原因そのものをなくしてしまう治療法です。体表近くの静脈(足の付け根や肘など)から先端に電極のついた細長い管(カテーテル)を挿入し、心臓の中に先端を届かせた後、不整脈の原因となっている場所や電導路を特定、その部分を高周波電流で焼いてしまう治療法で、1982年に海外で報告され、1990年から日本でも行われるようになりました。日本ではまだ20年ほどの歴史しかありませんが、その進歩は大きなものがあります。 図-2の左の写真は体外から挿入された電極カテーテルの様子をレントゲン透視で見たものです。最近はコンピューター技術の進歩が著しく、心臓の中の電気刺激の伝導する様子を3次元画像で表示しながら治療を行っています。図-2の右がそのコンピューター画像です。 ■治療の対象となる不整脈の種類 全ての不整脈がカテーテルアブレーションの対象となるわけではありません。基本的に、放置しても命に別状はなく、生活上大きな支障とならない場合は行いません。対象となることが多いのは以下のものです。 (1)発作性上室性頻拍 房室結節の中や、心房心室の境目に余分な伝導路があり、電気刺激が一か所を旋回してしまって起こるものです。突然、心拍数が120/分以上になり、ひどい動悸を起こします。発作がおさまるときにはスイッチが切れるように動悸も突然消えてしまいます。いくつかの種類がありますが、発作の頻度が高く、生活上で支障がある場合にカテーテルアブレーション治療の適応となります。一般に成功率は90%を越えています。 (2)心房粗動 心房の中に電気刺激が旋回する部位があり起こるものです。不整脈を起こしたときやそれが停止するときに血栓ができて脳梗塞の原因になることがあります。カテーテルアブレーションの良い適応です。特殊なタイプでなければ成功率は99%以上といわれています。 (3)心房細動 心房粗動と似ていますが心房粗動よりも脈拍の不整が目立ちます。これも心房内に血栓ができて脳梗塞の原因になることがあります。全ての心房細動が適応ではありませんが、最近ではカテーテルアブレーションが盛んに行われるようになってきました。成功率が心房粗動よりは低く、70〜80%あたりのようです。 (4)その他 場合により、命にかかわる不整脈である心室頻拍などにもカテーテルアブレーションが行われることがあります。 ■最後に 不整脈は種類が多く、放置しても問題ない軽度のものから、脳梗塞の原因になりうる中程度のもの、命の危険に直結する重症のものまで、実にさまざまです。治療内容も患者さんごとに異なります。まずは医師にご相談ください。 |
発行/萩野原メディカル・コミュニティ |