シリーズ「糖尿病教室」 No.20

糖尿病の薬物療法(その7)
 わたひき消化器内科クリニック 綿引 元

新しい糖尿病薬 インクレチン薬をめぐって(2)

 インクレチン薬は、昨年12月に画期的な糖尿病薬としてNHK「ためしてガッテン」で報道され、「患者さんの負担を減らし、治療の継続と合併症の予防に強い味方に!」と期待が高まっています。しかし、この薬も、あくまでも血糖コントロールの補助であることには他の糖尿病薬と変わりありません。薬を飲んでいるからと云って、食べ過ぎたり、運動不足が続くようでは良い結果は得られません。生活習慣の改善が最も大切になります。
 インクレチン関連薬には、経口DPP-4阻害薬と注射薬GLP-1関連薬があります。

■DPP-4阻害薬
図 GLP-1とDPP-4阻害薬
 インクレチンを分解する酵素の働きを阻害することで、インクレチンの作用を高める薬です。経口で服用できるインクレチン薬で、血糖値を低下させるにもかかわらず体重は増加しない、単独では低血糖が起こる可能性は低い、吐き気や嘔吐の副作用がないなどの特徴があります。HbA1cを0.5〜1.0%程度改善出来ると云われています。

■GLP-1関連薬
 インクレチンの構造を一部変化させることで、体内で分解しにくくした薬です。「インクレチン作用」を有するGLP-1(グルカゴン様ペプチド1)の生理作用に基づき、分解酵素DPP-4により分解されにくい血中半減期の長いGLP-1、GLP-1受容体作動薬が開発されました。現在、エキセナチド(バイエッタ)とリラグルチド(ビクトーザ)が国内では販売されていますが、いずれも皮下注射(1日1〜2回)で使用します。なお、徐放性の薬も開発され、1週間に1回の皮下注射でも血糖改善効果が可能になりそうです。




発行/萩野原メディカル・コミュニティ