シリーズ「糖尿病教室」 No.21

糖尿病の薬物療法(その8)
 わたひき消化器内科クリニック 綿引 元

新しい糖尿病薬 インクレチン薬をめぐって(3)

■SU薬を併用による低血糖
 欧米ではほとんど問題になっていませんが、わが国ではインクレチン薬とSU薬を併用しての重篤な低血糖による意識障害の報告が後を絶ちません。高齢者(65才以上)、軽度の腎機能低下(クレアチニン1.0mg/dl以上)、SU薬の高用量の内服(アマリール2mg/日を超えて使用している場合等)、ビグアナイド薬も加えた3剤併用により低血糖を起こしています。SU薬を使用する場合は、常に低血糖を起こす可能性があることを念頭に置くことが重要です。

■インクレチン薬の役割
表1 インクレチン薬 −投与法と健康保険で承認されている併用について
 インクレチン薬の役割は、血糖のコントロールだけでなく、
(1)GLP-1受容体作動薬は体重を減らす可能性があり、DPP-4阻害薬も体重を増やしにくい
(2)DPP-4阻害薬は心筋梗塞の合併を抑え、骨折も減ることが報告されている
(3)膵β細胞を保護する効果も期待されています。
 なお、DPP-4阻害薬では、わが国ではありませんが、急性膵炎や膵臓癌の危険性が高くなる可能性が報告されています。ほかの副作用が起こる可能性も否定できませんので、しばらくは慎重に経過観察するべきでしょう。

 インクレチン薬が出てきても、今までの糖尿病薬に置き換わるわけではありません。それぞれに特徴があり、患者さんによってはインクレチン薬より向いている場合もあります。また、インクレチン薬は食事療法や運動療法の代わりになるものではありません。




発行/萩野原メディカル・コミュニティ