暮らしに役立つ 医療のおはなし 54 |
グラム染色と呼吸器感染症1 やなせ内科呼吸器科クリニック院長 柳瀬 賢次 前回は、呼吸器感染症の治療を成功させるうえで「病原菌を見つけることが大切であること」、「病原菌を治療開始時点で推定するためには痰のグラム染色法が有用であること」をお話ししました。 今回は、呼吸器感染症を起こす主な病原菌について説明します。 (1)主な病原菌 呼吸器感染症の病原体には、細菌、ウイルス、カビなどがありますが、ここでは主な細菌について説明します。
(2)肺炎や気管支炎の発症の仕方 口や鼻腔の中には多種の細菌が定着しており、唾液1?中には10億匹の細菌がいるとも言われております。これらの細菌の中には病原性のあるものも、ないものもあります。人間は、こうした細菌たちと共存して暮らしています。一方、気管支や肺の中は無菌であるのが健康な状態です。ここに細菌が入り込んで繁殖すると気管支炎や肺炎を発症することになります。 しかし、結核などを除けば、細菌による肺炎や気管支炎の多くは、空気中に漂っている細菌を吸い込んで発症するものではありません。上に紹介した細菌の多くは口や鼻の中に住み着くことがあり、それが、気管支や肺に入り込んで発病します。健康な状態では、気管支に入り込んだ病原菌を殺菌したり痰として排除したりする仕組みが働き、細菌が増殖するのを防御しています。しかし、インフルエンザやその他のウイルスの感染(いわゆるカゼ)が起こると、のどや気管支の粘膜が傷つき細菌の侵入・増殖を防御するシステムが破綻してしまうのです。 手洗いとうがい、人混みを避ける、バランスのとれた食生活、十分に睡眠を確保するなどの対策で、さまざまな病原体に負けないようにしましょう。 |
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写真はすべて「呼吸 2012年6月号」より
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発行/萩野原メディカル・コミュニティ |