今回の「暮らしに役立つ医療のおはなし」は「老化と健康」をテーマにしましたので、糖尿病教室も「高齢者糖尿病」について特集を組みました。
平成19年度の厚労省が行った糖尿病の実態調査では「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性を否定できない人」とが2210万人、中でも60歳代と70歳代以上の高齢者に多く、高齢者の3人に1人が糖尿病か、その予備軍に該当すると推定されています。
加齢とともにインスリン分泌能は低下し、さらに、身体活動の低下が単に肥満だけでなく骨格筋などの減少につながり、インスリン抵抗性が増加します。また、食生活をはじめとする生活の変化も高齢者の耐糖能低下や糖尿病が増加する要因と云えます。
1991年から2000年までの10年間における糖尿病の死因調査が、日本糖尿病学会によって行われました。平均死亡時年齢は男性68・0歳、女性71・6歳と同時代の日本人一般の平均寿命にくらべ10年前後短命です。また、死因の第1位は悪性新生物(31・4%)、第2位が血管障害(糖尿病性腎症、心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳血管障害)(26・8%)、第3位は感染症(14・3%)です。なお、年代が上がるにつれて血管障害の占める割合が増加し、中でも虚血性心疾患、特に70歳代での増加が顕著です。
高齢者糖尿病の特徴として、空腹時血糖値と比較して、食後血糖値が加齢とともに高値になる傾向が強いことがあります。食後高血糖は動脈硬化と密接な関係が証明されています。さらに、60から80歳の高齢者における検討でも、食後高血糖が総死亡率に大きく影響することが示されています。
75歳以上の後期高齢者の場合は心身の機能低下に留意する必要があります。高齢者糖尿病では合併症を有する場合が多く、患者によって身体的・精神的機能レベルが多様です。認知症の発症頻度は非糖尿病の約2から4倍、転倒・尿失禁・低栄養・腰痛・膝関節痛などの老年病の合併も非糖尿病患者に比べ約2から3倍多いと報告されています。
高齢者糖尿病では特に低血糖に注意が必要であり、低血糖による異常行動は認知症と間違われやすいものです。また、高血糖があり脱水症状が著しい場合は、高血糖高浸透圧昏睡(意識がなくなる)に陥ることがあり、緊急の対応が必要になります。
発行/萩野原メディカル・コミュニティ |