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暮らしに役立つ 医療のおはなし 61

老化と健康 (その3)

わたひき消化器内科クリニック 院長 綿引 元

高齢者は若年者より病気と縁が深く、簡単に治らないものが多いので、治療することも重要ですが、病気にならないように予防することが何よりも大切で、特に若年期からの生活習慣などを通じて予防することが最も重要になります。  高齢者の病気に対するマネジメントは若年者の場合と異なり、表1のような特徴があります。高齢者が病気になったときには、薬による治療法だけでなく、従来から利用されてきた看護のほかに、リハビリテーション、介護、福祉、栄養などの分野での対応が重要になっており、各分野で緊密に連携をとりあい、患者さんを中心にしたマネジメントを行うことが望ましいでしょう。

■老年病の予防  
若い頃から老年病の予防は始まる

老年病は若い頃の病気や生活習慣が基礎にあることが多いものです。老年病の予防のためには「花咲ける老化」を目指すところですが、若い頃からの生活習慣に気をつけることが大切です。具体的にはメタボリックシンドロームの予防のための食事や運動をすること、喫煙や過度の飲酒、過度のストレスなどを避けることです。さらには、介護を必要としない高齢者になるために、運動器の機能向上、口腔機能の向上、低栄養改善などの介護予防があります。

1 食事による老年病の予防

若い頃の食習慣が老年病の危険因子になります。今日のわが国では、過食や肥満が増え、メタボリックシンドロームの人が増えています。これらの人は動脈硬化が進み、心臓、脳、腎臓などの病気がおこり、さまざまな身体機能が低下します。その基礎には糖代謝や脂質代謝の異常があり、日常の食事摂取と密接な関係があります。特に血管の老化には高血糖が最大の敵になり、糖尿病では動脈硬化のリスクが2〜3倍に増えます。また、高血糖は骨の老化にも関係しており、骨密度が正常でも骨折することがあります。

中年期の肥満は、動脈硬化のほかに認知症にもなりやすいと云われています。肥満の男性は、やせている人の倍以上認知症になる危険があるとの報告があります。

また、塩辛い食事を取ると高血圧も起こしやすくなり、多くの病気を併発します。食事制限は寿命を延長すると云われており、食事の工夫は老年病の予防に大切です。

逆に高齢者では、栄養不足により病気になることがあります。食欲低下、嚥下障害、吸収障害も多く、栄養障害に陥りやすいのです。高齢者でやせを訴える人がいますが、体重30kgまでが1つの目安となります。

バランスのとれた適切な栄養が摂取できるように、工夫しておいしく食べて、老年病の予防をしましょう。(後ほど、「ワンポイント・ヘルシートピック」で取り上げてもらいます)

2 運動による老年病の予防

四肢の筋肉を動かして運動すると、筋肉が収縮してエネルギーを使います。ブドウ糖や脂肪酸をエネルギーとして消費すると脂質が減って、体脂肪の蓄積が起こりにくくなり、肥満や動脈硬化を予防できます。  一方、筋肉を収縮させるためのエネルギー(ATP)をつくる過程で活性酸素などのフリーラジカルが出来ます。このフリーラジカルは老化を促進し、老年病を引き起こす原因になります。さらに、過激な運動をすると脱水や虚血がおこり心筋梗塞などにより生命の危機が訪れることもあります。激しい運動は注意が必要ですので、適度な運動をすることで老年病を予防しましょう。


発行/萩野原メディカル・コミュニティ