日常生活で注意すること
気管支喘息(以下、喘息)で通院中の患者さんから、日常生活での注意事項などの質問が多く寄せられています。今回は、そんな疑問について考えてみたいと思います。 喘息では症状がほとんどなくなって安定し、「もう治ってしまったのではないか?」と思っていても、何らかの要因をきっかけに再び咳、痰、呼吸困難、ゼーゼーが出現するようなことがあります。どんなことがきっかけになり、どのような対策をしたらよいのでしょうか?
喘息が悪化する要因には多くのものがあります。(表1)
かぜで喘息が悪化することは、多くの喘息患者さんが経験していることと思います。最初、鼻水が出るとかのどが痛いなど発熱等の症状で始まり、その後、咳が出始め、ゼーゼーして呼吸が苦しくなり、夜間苦しくて何度も目が覚めたりするようになります。かぜ症状を起こす病原体の多くはウイルスですが、マイコプラズマやクラミドフィラによることもあります。 対策としては、手洗いとうがいの励行、かぜの流行期は人ごみを避ける、かぜをひいた人との接触を避けること等が大切です。また、毎年11月頃にインフルエンザワクチンを接種することも重要です。
アレルギー体質をもつ人にアレルギー反応を起こす物質をアレルゲンと言います。スギ花粉症ではスギ花粉がアレルゲンです。喘息でも、アレルゲンに反応して喘息発作が起こる場合が多く、ダニ、ペット、カビなどのアレルゲンがあります。 大掃除をした後で喘息発作を起こし救急外来を受診することになるケースも珍しくありません。掃除によって喘息の原因として重要な、家のほこりの中のダニアレルゲンが室内に舞い上がり、それを吸入したために喘息が悪化するのです。ダニアレルゲンを除去するためには床や寝具にていねいに掃除機をかけることが重要で、また、ダニアレルゲンを通さない寝具カバーも就寝中のアレルゲン吸入を減少させます。 ペットを飼い始めてから喘息を発症することがあり、ペットアレルゲンの除去が重要となります。ハムスター、モルモット、ウサギでは屋内飼育を避けることで大きな効果が期待できます。
喘息患者さんの半数以上で、運動後数分してから呼吸が苦しくなったり、胸が重くなったりすることが知られています。これは、激しい運動により冷えて乾燥した空気でたくさんの換気をするため、気管支粘膜が乾燥したり、粘膜の細胞に障害が発生したりするためです。こうした悪化の多くは1時間以内に自然に改善します。 予防対策としては、普段の喘息治療をしっかり継続するとともに、運動開始15分前にメプチンやサルタノールを吸入しておくのが効果的です。
雨が降る前や台風が近づいた時、または急に気温が低下した時などに喘息発作を起こす患者さんは少なくありません。症状の悪化がみられた時は、メプチンやサルタノールを吸入して早めに症状を断ち切ることが大切です。また、黄砂により喘息が悪化することも知られております。喘息が不安定な状態にある患者さんは、黄砂予報を参考にして外出を控える配慮も必要です。
タバコの煙が刺激になって、咳き込んだり、呼吸が苦しくなったりすることは多くの喘息患者さんが経験しています。自分で喫煙することはもっての外ですが、受動喫煙を避ける工夫が必要です。タバコ煙の多い場所(受動喫煙対策が不完全な飲食店、喫煙が許可される集まり等)に行くのを避けましょう。家族内に喫煙者がいる場合は禁煙してもらうか、もしそれができない場合には屋外で喫煙してもらいましょう。また、喫煙直後は喫煙した人の吐く息、衣服、髪の毛などにタバコ煙中の物質が多量に残っていますので、患者さんとの接触を避けるような協力をしてもらえるよう家族内で話し合いましょう。 タバコ以外に、線香、蚊取り線香、たき火、花火、ストーブの煙等も喘息発作をひき起こすことがあります。また、香水、化粧品、ヘアスプレー、殺虫剤、生花などの臭いや入浴時の湯気も増悪因子となることがあります。
発行/萩野原メディカル・コミュニティ |