最近、外来で「先生、やっと禁煙できました。今は、アイコスを吸っています。」、「新型タバコは健康に悪くないんだってね。それに、煙が出ないから周りの人にも迷惑をかけないし・・・」など、患者さんからの声をよく聞きます。タバコが自分にも周囲の人にも良くないことをよく理解され、「早くやめたい」と考えておられることの現れかと思って伺っております。しかし、こうしたお考えには誤解がありますので、修正をしていただかないと危険です。
2013年に日本たばこ産業から「プルーム」が、2014年にフィリップモリスから「アイコス」が、2016年にはブリティッシュアメリカンタバコ社から「グロー」が発売されました。新型タバコには、①液体を加熱して発生したエアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子のこと)を吸入する「電子タバコ」②葉タバコを加熱し発生させたエアロゾル(ニコチンを含む)を吸入する「非燃焼・加熱式タバコ」の2種類があります。上記3つの新型タバコはいずれも、「非燃焼・加熱式タバコ」に分類されています。 日本で急速に普及しているフィリップモリス社の「アイコス」は世界10か国以上で販売されていますが、ほとんどが日本で販売されており(世界シェアの98%を占める)、日本だけがその実験場となっています。なお、フィリップモリス社の本社はニューヨークにありますが、アメリカにおいてはFDA(アメリカ食品医薬品局)が「『非燃焼・加熱式タバコ』は十分な安全性が確保できていない。」として認可していません。
「非燃焼・加熱式タバコ」は、煙の出る通常の紙巻きタバコ(燃焼式タバコ)と違って健康への害がないのでしょうか?たばこの煙は、たばこ自体やフィルターを通過して口腔内に達する「主流煙」と、これが吐き出された「呼出煙」、点火部から立ち昇る「副流煙」に分けられています。主流煙について燃焼式タバコと比較検討した報告では、同程度のニコチンや揮発性化合物(アクロレイン、ホルムアルデヒド)、約3倍のアセナフテン(多芳香環炭化水素物)等の有害物質が含まれているようです。今年度の禁煙学会で、「アイコス」は「紙巻たばこ製品の主流煙の分析結果と比較すると低値であった。一方で、紙巻たばこと同じ有害化学物質が含まれていることも確認された。」との報告がありました。 「非燃焼・加熱式タバコ」に変更しても、ニコチン依存状態は克服できず、発がん性物質を含む有害物質の吸入は続いてしまいます。
以上のことを考慮し、日本呼吸器学会では2017年10月31日に新型タバコに関する声明を発表し、「健康被害が少ない」との考えが推測に過ぎないとしたうえで、次のように結論づけています。
発行/萩野原メディカル・コミュニティ |