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暮らしに役立つ 医療のおはなし 74

新型タバコは 害がない???

やなせ内科呼吸器科クリニック院長 柳瀬 賢次

最近、外来で「先生、やっと禁煙できました。今は、アイコスを吸っています。」、「新型タバコは健康に悪くないんだってね。それに、煙が出ないから周りの人にも迷惑をかけないし・・・」など、患者さんからの声をよく聞きます。タバコが自分にも周囲の人にも良くないことをよく理解され、「早くやめたい」と考えておられることの現れかと思って伺っております。しかし、こうしたお考えには誤解がありますので、修正をしていただかないと危険です。

Ⅰ.新型タバコの種類

2013年に日本たばこ産業から「プルーム」が、2014年にフィリップモリスから「アイコス」が、2016年にはブリティッシュアメリカンタバコ社から「グロー」が発売されました。新型タバコには、①液体を加熱して発生したエアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子のこと)を吸入する「電子タバコ」②葉タバコを加熱し発生させたエアロゾル(ニコチンを含む)を吸入する「非燃焼・加熱式タバコ」の2種類があります。上記3つの新型タバコはいずれも、「非燃焼・加熱式タバコ」に分類されています。  日本で急速に普及しているフィリップモリス社の「アイコス」は世界10か国以上で販売されていますが、ほとんどが日本で販売されており(世界シェアの98%を占める)、日本だけがその実験場となっています。なお、フィリップモリス社の本社はニューヨークにありますが、アメリカにおいてはFDA(アメリカ食品医薬品局)が「『非燃焼・加熱式タバコ』は十分な安全性が確保できていない。」として認可していません。


Ⅱ.喫煙者の健康被害

 「非燃焼・加熱式タバコ」は、煙の出る通常の紙巻きタバコ(燃焼式タバコ)と違って健康への害がないのでしょうか?たばこの煙は、たばこ自体やフィルターを通過して口腔内に達する「主流煙」と、これが吐き出された「呼出煙」、点火部から立ち昇る「副流煙」に分けられています。主流煙について燃焼式タバコと比較検討した報告では、同程度のニコチンや揮発性化合物(アクロレイン、ホルムアルデヒド)、約3倍のアセナフテン(多芳香環炭化水素物)等の有害物質が含まれているようです。今年度の禁煙学会で、「アイコス」は「紙巻たばこ製品の主流煙の分析結果と比較すると低値であった。一方で、紙巻たばこと同じ有害化学物質が含まれていることも確認された。」との報告がありました。  「非燃焼・加熱式タバコ」に変更しても、ニコチン依存状態は克服できず、発がん性物質を含む有害物質の吸入は続いてしまいます。

Ⅲ.受動喫煙

「煙が出ないから禁煙エリアでも吸える」と言う方がいますが、本当でしょうか?「非燃焼・加熱式タバコ」を吸っている近くでは独特の嫌な臭いがするという話を聞きます。目に見える煙が出ていないだけで、特殊なレーザー光を「非燃焼・加熱式タバコ」使用者の呼気にあてると大量のエアロゾルを吐き出しているのがわかります。


Ⅳ.呼吸器学会の声明

以上のことを考慮し、日本呼吸器学会では2017年10月31日に新型タバコに関する声明を発表し、「健康被害が少ない」との考えが推測に過ぎないとしたうえで、次のように結論づけています。

  1. 非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある。
  2. 非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。従来の燃焼式タバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない



発行/萩野原メディカル・コミュニティ