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暮らしに役立つ 医療のおはなし 76

糖尿病と膵疾患 (その2)

わたひき消化器内科クリニック 院長 綿引 元

膵臓はインスリンとグルカゴンに代表される血糖調節ホルモンを産生・分泌する重要な臓器であり、そのため膵疾患と糖尿病には密接な関係があります。

■膵性糖尿病

 膵臓はインスリンとグルカゴンに代表される血糖調節ホルモンを産生・分泌する重要な臓器であり、そのため膵臓の病気と糖尿病には密接な関係があります。  慢性膵炎や膵癌などの膵臓の病気が進行するに伴って出現する糖尿病を「膵性糖尿病」と云います。また、手術により膵臓を切除したために発症した糖尿病なども膵性糖尿病に含まれます。
 古い全国疫学調査になりますが、膵性糖尿病はすべての糖尿病患者のうち0.8%にあたり、有病率は人口10万人当たり15.2人でした。膵性糖尿病の原因疾患としては慢性膵炎が最も多く40.0%、続いて膵癌24.6%でした。その他、膵切除後10.2%、急性膵炎7.5%、自己免疫性膵炎6.1%でした。
 慢性膵炎ではアミラーゼ・トリプシン・リパーゼなどの膵消化酵素を分泌する膵外分泌細胞がはじめに障害され、炭水化物・たんぱく質・脂肪などの消化吸収機能の低下がみられます(膵外分泌機能)。慢性膵炎が進行するに従いインスリン・グルカゴンなど血糖調節ホルモンを産生・分泌する膵ランゲルハンス島の機能低下や減少・消失がみられ糖尿病になります(膵内分泌機能)。
 膵性糖尿病では、膵β細胞の減少・消失に伴いインスリン分泌が低下しますが、膵α細胞も減少するためグルカゴン分泌も低下します。そのために血糖変動が激しく、高血糖も低血糖も生じやすくなります。
 膵性糖尿病の主要症状は口渇・多尿・全身倦怠感など一般的な2型糖尿病と同様ですが、その複雑な病態によりやせ型でインスリン治療を必要とする症例が多く、膵外分泌機能不全による消化吸収障害を合併します。

■膵性糖尿病の治療

膵性糖尿病は消化吸収機能の低下を伴うため、治療の基本は「十分な栄養摂取とそれに合わせた血糖コントロール」になります。  膵性糖尿病の食事療法では低栄養にならないように栄養補給を行うことが重要です。また、消化吸収障害の結果、脂肪性下痢をきたしますので、消化酵素の補充が必要になります。  インスリン治療をしている患者さんでは、低血糖に注意する必要があります。通常の糖尿病の患者さんのような厳格な血糖コントロールは避けて、低血糖を起こさないコントロールが重要で、HbA1c 7%前後を目標に設定するのが良いとされています。  低血糖の予防には ①低血糖症状にはどのようなものがあるかを知っておくこと ②自己血糖測定を習得して適宜血糖測定を行うこと  が重要です  慢性膵炎の成因がアルコール性であれば、飲酒は低血糖を誘発するため、禁酒することが重要です。



発行/萩野原メディカル・コミュニティ