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特集「糖尿病教室」 No.31

高齢者糖尿病と老年症候群 糖尿病と認知症(その1)

わたひき消化器内科クリニック 院長 綿引 元

 平成28年版高齢社会白書によると、高齢者糖尿病患者約730万人のうち約20%が認知症を合併しています。いっぽう、認知症患者約460万人のうち約32%が糖尿病合併と推定されており、高齢者糖尿病治療では認知症の予防が大きな課題になっています。
 高齢者糖尿病患者は、糖尿病のない高齢者と比べると認知症に1.5倍、軽度認知機能障害(MCI、認知症と加齢によるもの忘れの中間にあたるもの)に1.2倍なりやすいと云われています。
 糖尿病の前段階の前糖尿病(随時血糖140〜198mg/dl)からも認知症になりやすく、MCIから認知症へ移行する割合は、糖尿病のない高齢者と比較すると5.0倍にもなります。
 認知症に至らない認知機能障害についても、高齢者糖尿病では、注意・集中力、学習・記憶能力などの領域が障害されやすく、糖尿病の服薬管理などの自己管理が困難になり、重症低血糖のリスクが高まります。
 糖尿病患者の認知機能の低下の原因は、脳血管性認知症とアルツハイマー病の要素が絡み合っており、脳梗塞があるからといって腦血管性認知症と決めつけることが出来ません。脳白質の微細構造の変化に高血糖や重症低血糖などの要素が加わることで、認知機能の低下が起って来ます。認知症の予防の為には、糖尿病のしっかりとした治療と自己管理が大切になります。


発行/萩野原メディカル・コミュニティ