ジェネリック医薬品をご存じですか? 2002年7月現在

わたひき消化器内科クリニック

今まであった薬と同じ成分で作られ、まったく同じ効き目を持つジェネリック医薬品(特許が切れた後に販売されるもの。後発品)は、名前は知られていないものの、価格が安く患者さんに負担をかけない、いわば薬の「無印良品」。両クリニックでも、患者さんと相談しながら使用を進めていく予定です。今月は、まだなじみの薄いジェネリック医薬品についてご紹介します。

■ジェネリック医薬品とは?
 医師の使う薬には、同じ有効成分、同じ効き目で高い薬と安い薬があることをご存じですか?
 高い薬は、日本で最初に発売された薬(新薬)で先発品と呼ばれます。安い薬は、新薬の特許が切れた後に厚生労働省の承認を得て販売される薬で、ジェネリック医薬品(または後発品)と呼ばれている薬です。例えば、「塩酸ラニチジン」という消化性潰瘍治療薬がありますが、この薬は新薬として「ザンタック」という商品名で広く使用されています。最近、特許が切れたために、ジェネリック医薬品が販売されました。そのうちの一つに「ラデン」があります。ザンタックとラデンは名前と価格が異なるだけで、成分的にはまったく同じ薬だといえます。
 ジェネリック医薬品は新薬に比べて開発費が少なくて済むことから安価です。しかも、品質・有効性・安全性は確立されています。大メーカーの薬ではありませんが、無印良品といったところです。

■ジェネリック医薬品が注目される理由
  近年、EBM(科学的根拠に基づいた医療)が強調される中で、効果や副作用が不確かな新薬よりも、国際基準からみて評価の定まった良質で安全なジェネリック医薬品(後発品)の使用への見直しが始まっています。厚生労働省もようやく重い腰を上げ、つい先日に国立病院に対して医薬品の採用にあたり「新薬偏重を見なおし」、「後発医薬品の使用促進」を求める通知を出しました。また、全国保険医団体連合会では、
(1)医療の安全性のために試され済みの安全な医薬品を使用する(安全な医療)
(2)効果が同じなら患者負担軽減のために安い医薬品を使う(患者負担の軽減)
(3)大メーカー優遇の薬価制度を改善(薬価制度の改善)
(4)大病院のブランド品優先の薬剤使用傾向に歯止めをかける(医学教育、医薬癒着の改善)
(5)ジェネリック医薬品の普及を通して医療費の節約をはかる(医療費構造の転換)
などの理由から、ジェネリック医薬品の使用を勧めています。
 高騰する医療費の抑制のため、医療先進国の欧米ではジェネリック医薬品が重要視され活用されており、全医薬品に占める割合は、ドイツ53%、イギリス49%、アメリカ42%などと約半分近くを占めています。いっぽう、わが国では11%にすぎず、異常なほど新薬に偏重しています。大量に医薬品を購入するわが国の大病院では、新薬ほど薬価差益が大きく経済的なメリットがあることが新薬に偏重する理由の一つになっています。こうした傾向を改善するためにも、ジェネリック医薬品の積極的な使用は効果的だと言えます。
 安価で安全、医療費を節減し、患者さんの負担を抑制できるジェネリック医薬品。現在、国会に出ている医療制度改革関連法案(健康保険法等の一部改正法案)には、高齢者1・2割、健保本人3割負担、保険料等の大幅な負担増が盛り込まれ、今後、ますます患者さんの医療費負担増がもくろまれている中で、少しでも患者さんの負担の軽減をはかるために、積極的にジェネリック医薬品を採用していく予定です。これらの趣旨をご理解いただき、ご協力のほどお願い致します。