膵癌について(2)
膵癌を早期に診断するために
日本膵臓学会の膵癌登録(2012)では、腫瘍径10㎜未満の膵癌(TS1a)の5年生存率は80.4%と良好ですが、腫瘍径10〜20㎜の膵癌(TS1b)では50%程度に低下することから、腫瘍径10㎜未満の膵癌を、根治ならびに長期予後が期待できる早期膵癌としています。
1.膵酵素
膵臓から分泌される膵酵素は、アミラーゼ、Pアミラーゼ、リパーゼ、トリプシン、エラスターゼIなどがあり、膵癌における膵酵素の異常は、ほぼ3割の症例に認められます。血中膵酵素の上昇は、膵管閉塞や膵液うっ滞による血中への逸脱が原因で、膵癌による随伴性膵炎を反映しています。慢性膵炎や進行膵癌では、膵実質の萎縮のため膵外分泌機能は低下し、膵酵素は低値を示すことが多いので、異常低値も注意する必要があります。
2.腫瘍マーカー
がん細胞があると検出される特殊なタンパク質「腫瘍マーカー」にはCEA、CA19‐9などがあり、膵癌診断にはCA19‐9が優れていました。しかし、CEAの高値は15%、CA19‐9の高値も39%を認めるに過ぎません。CA19‐9が正常でもCEAが上昇する膵癌もあり、CEAは他の消化器癌でも上昇するので、膵癌スクリーニングではCEAも実施する意味があると言えます。
3.糖尿病の検査
膵癌では糖尿病の合併が約25%と高率に認められることから、膵癌を疑った場合は血糖値やHbA1c、尿糖などの測定も有用になります。
また、糖尿病患者では膵癌リスクが1.94倍と高いことから、糖尿病患者で自覚症状がある場合、膵癌を疑い膵酵素や腫瘍マーカーを測定することが望ましいです。
腹部USは膵癌のスクリーニング検査として必ず行われるべきで、膵癌の検出感度は60〜90%です。US所見として主膵管拡張と膵嚢胞性病変が膵癌の高危険群になります。 膵癌の診断において主膵管拡張は間接所見として重要ですので、腹部USにて腫瘤が見つからなくても、CTやMRIなどの画像検索を進めるべきでしょう。
1.新規発症糖尿病、糖尿病急性増悪
新規発症の糖尿病患者は、3年以内の膵癌の発症が非糖尿病患者の約2倍、50歳以上に限定すると約10倍という報告もあります。
膵癌症例の約5%は糖尿病の急性増悪が診断の契機となり、糖尿病患者の中で膵癌発症に関わる因子として、65歳以上、喫煙、胆石の既往、慢性膵炎、肥満があげられます。糖尿病の新規発症は膵癌発見のマーカーとなり得るとともに、糖尿病急性増悪例は膵癌の可能性も考えて検索を行う必要があります。
2.急性膵炎
急性膵炎後の膵癌は、2年以内に発症しやすく、その多くは進行膵癌です。40歳以上で発症した急性膵炎は膵癌の危険因子となりますので、膵癌の存在を考え、少なくとも2年間は画像検査による観察が必要になります。
発行/萩野原メディカル・コミュニティ |