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特集「糖尿病教室」 No.34

高齢者糖尿病と老年症候群 糖尿病と認知症(その3)

わたひき消化器内科クリニック 院長 綿引 元

高齢者糖尿病と老年症候群糖尿病と認知症(その3)

高齢者の認知症ではアルツハイマー型認知症と血管性認知症が大半を占めており、糖尿病のほかに高血圧、動脈硬化、脂質異常、肥満などが認知症の原因になります。インスリン抵抗性が高い糖尿病や耐糖能異常(IGT)の他に、高インスリン血症を伴う肥満やメタボリック・シンドロームも認知症、特にアルツハイマー型認知症になりやすいといわれています。(図)


■インスリン抵抗性と認知症

高インスリン血症が認知症発症の危険因子であり、糖尿病の前段階であるインスリン抵抗性が高い前糖尿病(随時血糖140〜198mg/dl)では、軽度認知機能障害(MCI)から認知症へ移行するリスクが5倍になるという報告もあります。
インスリンは海馬、皮質に受容体があり、学習・記憶に関与しており、インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾン(アクトス)を投与すると認知機能を維持することができたという報告があります。

■血糖コントロールと認知症

高血糖の患者では注意集中力や視覚記銘力などの認知機能が低下します。
高齢者糖尿病患者の長期追跡調査ではHbA1cが8.0%以上の患者は7.0%未満の患者に比べて認知機能が低下していました。
前糖尿病の高齢者においても血糖高値と認知症の発症との関連が報告されています。5年間の平均血糖が115mg/dlの患者は100mg/dlの患者に比べて認知症の発症率が18%も高かったとする報告があります。

(シリーズ「糖尿病教室」は、次回より聖隷浜松病院内分泌代謝科の綿引基医師が担当することになります。ご期待ください。)

発行/萩野原メディカル・コミュニティ