胃十二指腸潰瘍と上手に付き合うために(2)胃十二指腸潰瘍の治療と再発防止 わたひき消化器内科クリニック 綿
引 元
(1)胃十二指腸潰瘍の治療薬
潰瘍の発生要因には防御因子と攻撃因子があります。そのため、潰瘍の治療薬は、攻撃因子に働く薬と防御因子に働く薬の2タイプに分けられます。
攻撃因子に働く薬として、胃液の酸度を低下させる制酸剤、抗コリン剤などがあります。最近、H2ブロッカーやプロトンポンプ・インヒビターという酸分泌を直接抑える薬が現われ、潰瘍はきわめて治りやすくなりました。しかし、その反面、治癒後の再発が起こりやすいため、使い方が難しく、医師の充分な監視のもとで薬を飲む必要があります。薬を飲めば腹痛などの症状はとれますが、潰瘍が治ったのではありません。しっかり治っていることを確認して薬をやめる必要があります。薬には少なからず副作用があるので、医師の診察のもとで、ときどき血液の検査をしながら服薬することが大切です。
防御因子に働く薬として、粘膜の保護、抵抗性を高め、粘膜の組織修復を促したりする粘膜保護剤としての薬があります。これらの粘膜保護剤と前述した酸分泌抑制剤の併用により潰瘍の治療が行われます。さらに、神経質な方には、鎮静剤や精神安定剤も使われます。
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(2)ヘリコバクター・ピロリと胃十二指腸潰瘍
最近、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と胃十二指腸潰瘍の発生や再発との関連が話題になっています。ピロリ菌は、胃十二指腸潰瘍のみならず胃炎・胃癌などほとんどの胃の病気に見出される細菌で、日本では40才を越えた方の70%前後が感染しています。ピロリ菌単独で潰瘍が発生するものではありませんが、ピロリ菌に感染していると胃十二指腸潰瘍が再発しやすくなるため、胃十二指腸潰瘍の治療としてピロリ菌の除菌療法が行われています。
除菌療法は、1週間だけ2種類の抗生物質と、前述したプロトンポンプ・インヒビターを飲むことです。約70〜80%の方で除菌が可能で、潰瘍の再発も少なくなります。胃十二指腸潰瘍の再発に悩んでいる方は、一度試みるべきでしょう。ただし、逆流性食道炎を持っている方の場合、食道炎の症状が強くなることがあるため、慎重に対応する必要があります。除菌療法の詳細については、受付に「パンフレット」がありますのでお申し付け下さい。
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(3)日頃の健康管理で再発を防止 胃十二指腸潰瘍は治りやすい反面、再発しやすい病気です。忙しいなどの理由で、市販の治療薬に頼る方もみられますが、自己流で市販薬を服用しても、症状を和らげることはできるかもしれませんが、完治させることはできません。医療機関を受診し、医師の指示に従って、しっかりと治すことが重要です。また、常に自分の体の調子を正しく把握しておくことが大切であり、潰瘍が治ってからも、少なくとも年1〜2回は定期的に内視鏡検査を受けることを強くおすすめします。日本人に多い胃癌の早期発見にも役立ちます。
出血性胃潰瘍の治療
(1)潰瘍底から、勢いよく噴出する出血が見られる。
(2)内視鏡的止血術により、出血量が減少。
(3)血液の流出もなくなり、潰瘍底の露出血管が明瞭になる。
(4)翌日の内視鏡検査で、止血が確認された。
潰瘍底に露出血管を認め、血液が噴出している出血性潰瘍では、以前は緊急手術が行われましたが、現在では内視鏡を用いて特殊な薬液を潰瘍底に注入して止血を行います。下血や吐血を来たしたら、緊急に病院を受診し、内視鏡による止血術を行うことで、90%は止血可能です。
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