やなせ内科呼吸器科クリニック 院長 柳瀬 賢次
自分の身体のことだけど、わからないことが実はいっぱい。読者の皆さんから寄せられた内科・呼吸器科に関する素朴な疑問に柳瀬先生が答えます。
■肺ガンについて
Q.
親戚の中に肺ガンで亡くなる人が多いのですが、ガンは遺伝するのですか?
A. 喫煙や、石綿(アスベスト)に代表される職業上の発ガン物質への曝露によって、肺ガンの発生が多くなることはわかっています。しかし、現在のところ肺ガンが遺伝する証拠は得られていません。今後、ヒトの遺伝子研究の進歩により肺ガンが発生しやすい遺伝子が発見される可能性はあると思います。
■気管支喘息について
Q. 昔、喘息の発作の様なものが起きました。アレルギーだと言われしばらく通院しましたが、症状がなくなったため今は病院に行っていません。放置した場合、再び同じ症状が出る可能性はありますか?
A. 気管支喘息を「治ってしまう」病気とは考えない方がよいと思います。もちろん、気管支喘息の患者さんの中には、いったん発作が起こっても治療によって症状がなくなり、その後10年、20年と長期間にわたって症状が出ない方も少なからずおります。そのことを、「治った」と考えるより「病気が眠ってしまった」と考えた方が良いと思います。長期間無症状でいても、カゼをひいたり、生活環境の変化や天候の急激な変化をきっかけに喘息発作を再発することがあるからです。軽症の気管支喘息では治療を終了できることが多いわけですが、大切なのは、発作が起こったときに十分な治療を受け、治療の終了時期は主治医と相談しながら慎重に決定することです。自己判断で勝手に終了すると短期間のうちに再発するケースがよくみられます。
■結核について
Q. 生後7ヶ月の乳児がいますが、祖父が結核にかかっていることがわかりました。感染を防ぐためには、どのようなことに気を付けたら良いですか。
A. 結核については「感染」と「発病」を区別して考える必要があります。「感染」は結核菌が体内に侵入したことであり、「発病」は結核菌が体内で増殖し、肺内に病巣を形成し、咳、発熱などの症状が出ることを意味します。「感染」しても「発病」する人は10〜20%ですので、「感染」=「発病」ではないのです。
このケースでは、まず、感染したかどうかを判定するためにツベルクリン反応検査を行います。乳児がBCG接種をされていないとすると、ツベルクリン反応が陽性(発赤の直径が10
mm以上)なら「感染している」と判定し、発病予防のためにINHという抗結核薬の内服を始めることになります(もちろん胸部X線写真を撮り、肺に結核の陰影があれば「発病している」と診断し複数の抗結核薬による治療が開始されます)。ツベルクリン反応が陰性(発赤の直径がが10
mm未満)の場合は、通常、すぐにはINHの内服を始めず、2ヶ月後に再度ツベルクリン反応検査を行います。
なお、家族内に肺結核患者が発生した場合は、子供だけでなく家族全員の結核検診が行われます。具体的なことは、保健所がアドバイスしてくれますのでそれに従って検診を受けてください。
|