膵臓の病気(3) わたひき消化器内科クリニック 綿
引 元
4膵臓の検査について
日本人の食生活が著しく変化し、高カロリー・高脂肪の食事をとる頻度や、肝臓や膵臓に悪影響を及ぼす飲酒の量も増加しています。このため、慢性膵炎や膵癌などの膵疾患になる人が増えてきています。膵疾患の診断のきっかけは、最近、膵疾患が多いということを念頭におくことから始まります。
■膵臓の検査とは
膵臓の検査は、一般的には、上腹部痛、上腹部重圧感、背部痛、食欲不振、体重減少などの症状を有する患者さんのうち、食道、胃、十二指腸などの上部消化管及び肝臓や胆道の検査を行った後、これら検査で症状が説明できない場合に行うことが多いと思われます。
膵臓の検査には形態的な検査(画像診断)と機能的な検査(血液や尿による検査など)があります。腹痛や腰背部痛など膵臓の病気を想定した場合には、まず採血を行い、膵胆道系酵素の上昇の有無をみたり、エコーやCTなどの画像診断を行い、膵管や胆管の拡張の有無や腫瘤像の有無などを観察します。次いで、膵管系を観察するためにERCPやMRCPを行います。さらに詳細な診断をする場合には、超音波内視鏡検査(内視鏡の先端に超音波発生装置を装着したもの)や膵管鏡検査(極細の内視鏡で膵管の中を観察する)、血管造影検査、細胞診などの検査が行なわれます。
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■主な検査の内容
(1) 採血(血清膵酵素や膵腫瘍マーカー)
膵炎を起こしているかどうかをみる場合は、採血して血液検査で血清膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼIなど)が異常高値になっているかどうかをみていきます。さらに、他の検査で膵腫瘍が疑われる場合には、腫瘍の有無をみる腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)を検査します。また、膵疾患は肝機能検査にも影響を及ぼすので、ビリルビンやGOT、GPT、γ-GTPなどの肝機能検査も同時に行います。
(2) 尿アミラーゼ排泄量一週間連続測定法
自宅で夕食後の尿を連続一週間分ためて検査します。軽い膵炎の診断に有用な検査です。
(3) 腹部超音波検査(エコー)
超音波を発振するプローブを腹壁から強く押し当て診断します。腫大した膵臓、膵内の腫瘤像、拡張した膵管の状態などを観察します。患者さんへの負担が少なく手軽な検査です。
(4)
CT
X線を使用して体幹の横断像を撮影します。膵臓の横断像を撮って、膵臓の腫れ、膵腫瘤の有無を診断します。
(5) ERCP(内視鏡的膵胆管造影法)
内視鏡を飲み、十二指腸に開口した膵管や胆管に直接造影剤を注入して膵管と胆管をX線で描出します(膵臓に異常がある場合は膵管に異常が出ます)。時には造影剤を注入することで膵炎を誘発することもあります。小さな膵癌の診断になくてはならない検査です。
(6) MRIとMRCP
磁力を使用し体幹の断層像を撮影します。MRCPはMRIを用いて三次元画像を構築することで、ERCPと同じように膵管と胆管を描出することができます。
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(7) セクレチン・テスト
ゴム管を十二指腸まで挿入し、膵液を採取して膵臓の外分泌機能を見る検査ですが、最近はあまり行われなくなりました。
(8) 糖負荷試験
膵臓の内分泌機能をみる検査です。
その他に、便中キモトリプシン試験やPFD試験などの機能検査もありますが、一般的にはあまり行われません。
膵臓の病気の診断は大変難しく、これらの検査を上手に組み合わせ、総合的に診断していくことが必要になります。 |
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