心電図検査のおはなし やなせ内科呼吸器科クリニック 循環器担当 山下 恭典
心電図検査は、循環器の診療になくてはならない検査の一つです。長い歴史を持つ検査で、一九〇三年にポーランドのアイントーベンが初めて心電図を記録してから、今年でちょうど百年になります。現在でも臨床の現場で広く活躍しており、病気の発見などに重要な役割を果たしています。
■心電図検査の実際
心電図検査は、内科や循環器科の診療に限らず、検診や人間ドックなどの時にもよく行われます。皆さんの中にも経験したことのある方が多いと思います。 心臓がドキンと拍動する時、人間の身体にはわずかな電流が流れます。心電図検査は、その電気活動を機械で測定する検査です。身体に電気を流すわけではありませんので、危険性も苦痛もまったくありません
。 心電図検査を受ける時には、まず、患者さんに両手首、両足首、胸を出してベッドに仰向けに寝ていただきます。手首と足首には、大きな洗濯バサミのような電極を四個、胸には吸盤またはシール状の電極を六個貼り付けます。これで準備完了。後は全身の力を抜いていただければOKです。検査時間は約三十秒。全部で十二種類の波形の記録をとります。この時、身体に力が入っていると、筋肉の電気活動が雑音のように入ってしまうため、きれいな記録をとることができません。リラックスして、気楽な気持ちで検査を受けることが大切です。
■心電図検査が必要な時とは?
循環器の診療の場合は、動悸、息切れ、胸痛など胸の症状を訴える患者さんはもちろん、心臓の音を聴診器で聴いた時に雑音を指摘された方、胸部レントゲンで心臓が大きいと指摘された方などについてはほぼ全員に心電図検査を実施します。また、心臓自体の病気はなくても、心臓に影響を及ぼす可能性のある病気(高血圧、高脂血症、腎臓病、慢性の肺の病気など)を持つ方も、最低一度は行っておく必要があると思います。検診や人間ドックではあらかじめメニューに組み込まれており、無条件で行われることもあります。また、病気の治療目的で病院に入院する時には、何科の病気であるかに関わらず行うことが多いようです。 |
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■心電図検査で異常がなければ病気ではない?
多くの場合はそうですが、一部の例では百%そうとは言い切れません。例えば、狭心症という短時間の発作の場合では、胸の痛みの発作が起こっている時には心電図に異常波形が見られますが、発作がおさまるとその異常は消えて、普通の波形に戻ってしまいます。そのため、普段の心電図にはまったく異常が見られないことが多いのです。不整脈が発作的に出るような人でも同様です。また、普通は心電図に異常が現れる病気でも、病状が非常に軽いと、異常と判断できない場合もあり得ます。こうした場合には循環器の専門医でも判断に迷うこともありますので、疑わしい時には他の検査をさらに行うこともあります。
■心電図に異常があった時には
心電図の異常波形を見ただけで心臓病の診断が確定することもありますが、多くの場合、症状や胸部レントゲン、聴診での心音、血圧の数値などを含めて考え、疑わしい病気の種類をしぼり込みます。その上で診断の確定に必要な二次検査(心エコー検査、ホルター心電図検査、心臓核医学検査、心臓カテーテル検査など)を行っていきます。つまり、心電図検査は診断の第一歩となる検査なのです。
心電図が正常か異常かを判断する基準は細かく決まっていますが、心電図の波形は正常な人でも個人によってばらつきが大きいのが実情。ですから、心電図では異常を疑われた方でも、二次検査で心臓病がみられなかったというケースも案外多いのです。心電図に異常があると言われた場合でも、あまり心配し過ぎるのは禁物。まずは循環器の専門医に相談し、本当に心臓に異常があって心電図の異常が指摘されたのか、あるいは心臓は正常で心電図波形にクセが強いだけなのかを診断してもらいましょう。
もっとも良くないのは、心電図の異常が指摘されているのに、「もし心臓病だったらどうしよう」とか「体調は悪くないから大丈夫だろう」などと考えて、そのままウヤムヤにしてしまうことです。白黒をきちんとはっきりさせ、もし病気がある場合には早期に発見し、適切な治療を行うことが患者さんにとって一番望ましいことです。当クリニックでは、通常の心電図検査の他、ホルター心電図検査や心エコーの検査なども行っています。不安のある方はもちろん、検診などで異常を指摘され、そのまま放置されている方も、お気軽にご相談ください。
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