膵臓の病気(1) わたひき消化器内科クリニック 綿
引 元
膵臓の病気は、急性や慢性の膵炎、膵癌など、激しい痛みを伴うたいへん危険な病気の一つです。近年、アルコールの消費量が増大するのに比例して、膵炎は増加しています。また、膵癌は高齢化社会の伸展と共に増加の傾向があります。
1 膵臓とは
膵臓は胃の裏で背骨の前にあります。そのため、膵臓が痛むと胃の部分が痛く感じたり、背中が痛かったりします。
膵臓には大きく分けて2つの働きがあります。(図-1)1つは【外分泌】という働きです。アミラーゼ、リパーゼ、トリプシン等の消化酵素を作り、膵管という管に分泌して十二指腸に出し、食べ物の中の炭水化物・脂肪・蛋白質を消化して小腸で吸収されやすくします。もう1つの働きは【内分泌】です。膵臓の中のランゲルハンス島というところでインスリンというホルモンを作り、直接血液の中に分泌します。インスリンは食べた物から吸収された糖分を分解して血糖を下げたり、脂肪や蛋白質をエネルギーに変えたりします。このインスリンが少なくなると糖尿病になります。糖尿病の患者さんの中に膵癌や膵炎など膵臓の病気の方もいますので、糖尿病と診断された患者さんも、膵臓の検査が必要になります。 |
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2 膵炎とは
●急性膵炎と慢性膵炎
-原因不明の腹痛は精密検査を-
膵炎には、急激な腹痛で始まり、救急の治療が必要となる急性膵炎と、激しい痛みではありませんが、頑固に腹痛を繰り返す慢性膵炎があります。
慢性膵炎は、数週間または数カ月おきに繰り返す上腹部の痛みが特徴的です。しかし、痛みの部位や痛みの性質にはこれといって特徴がないために、胃カメラなどの検査をはじめ、腹部超音波検査(エコー)など一般的な検査では診断がつかず、原因不明の腹痛として片づけられていることがあります。原因のわからない腹痛で悩んでおられる方は、一度精密検査をおすすめします。
慢性膵炎の末期になると、膵石(膵臓に真珠と同じ成分の結石がたまる)や糖尿病が出現します。
●膵炎の誘因
-アルコール多飲者に多い-
膵炎の主要な誘因はアルコールの多飲で、慢性膵炎の3分の2を占めています。日本酒に換算して、3合以上毎日10年間以上飲んでいる方は膵臓か肝臓のどちらかが傷害されると言われています。上手にアルコールと付き合うことが大切です。お酒の上手な飲み方は、
(1)1日、日本酒で1合以内(ビールなら中 瓶1本)
(2)週休2日制(連続して48時間アルコール を絶つこと)
(3)つまみを取りながら、楽しく飲むと言われています。この3つのルールを守れば、百薬の長として長く楽しむことができるのです。
●膵炎の症状
-繰り返す上腹部の痛みが特徴-
慢性膵炎の主な症状は、繰り返す上腹部痛が特徴です。しかし、膵臓の働きが荒廃した末期には、腹痛は軽くなり、やがて消失します。そして腹痛に代わって糖尿病や消化不良による痩せなどが現れてきます。(図-2)
膵炎の症状をまとめると、
(1)胃の辺りが痛い
(2)背中が痛い
(3)吐き気、嘔吐
(4)食欲がない
などがあります。そのほか、痩せ(体重減少)や身体がだるい等の症状がみられます。また、特別な場合には、腹部のしこりや黄疸がみられることもあります。
●膵炎の治療
-食生活の摂生が大切-
激しい痛みを伴った慢性膵炎の急性増悪期には、膵臓の安静を保つために、入院して短期間の絶食と点滴を行います。
痛みがなくなった時期の治療は、再発を起こす誘因をできる限り取り除くことが目的になります。最も大切なことは、食生活の摂生です。アルコール類を禁止して、脂肪食、大食を避けるようにすることが肝心です。食事は規則的にして、腹八分目ぐらいにするように心がけて下さい。
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慢性膵炎と診断された患者さんは、腹痛の激しい急性増悪期には入院して治療しますが、急性期以外は外来に通院し、日常生活上の注意を守りつつ、薬を飲んでいただきます。時々、血液や尿の検査をし、薬をいつまで飲んだら良いのか、慢性膵炎は良くなったのか、悪化したのかを判断していきます。
慢性膵炎の時に使う薬には、フォイパン、コスパノン、スパカールなどがあります。さらに腹痛が強い場合には、痛みを和らげる鎮痙薬が使われます。また、当院では漢方薬(柴胡桂枝湯など)も使用しています。末期になると、消化酵素剤や糖尿病治療薬も使われます。なお、鎮痙薬は高齢者では尿が出にくくなったり、糖尿病治療薬では低血糖症状が出現することがありますので注意が必要です。 |
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